
駅ナカ、駅チカ…そんな言葉が当たり前になってきた今、究極の駅近ホテルといえるのが、東京駅にある東京ステーションホテル。
東京駅丸の内南口改札から30歩という場所に位置し、まさに東京の中心にあるこのホテルは、2012年秋、赤煉瓦の東京駅舎とともにリニューアルオープンした。
関東大震災、第二次世界大戦を乗り越え、新たな装いで生まれ変わったというニュースは、誰もが一度は目にしたことと思う。
しかし、私がこのホテルに惹かれるのは、その立地や新しさだけが原因なわけではない。
まず、レストランの豊富さが素晴らしい。
宿泊に特化したホテルが次々と台頭してくる中、ステーションホテルには、10を超えるレストラン、ショップがある。
フレンチ、イタリアン、中華、日本料理…食べたい!と思ったものをその時の気分で選ぶことができる。
だが、その中でも、私のお気に入りは、フレンチレストランのブラン ルージュである。
私は料理の専門家でもなければ、美食家でもない。
そのため、料理は、「本当に美味しい!」としか表現の仕様がない。
ただ、他のフレンチレストランに比べて、素材や器に、日本的な要素が多く含まれているように思う。
そのため、フレンチを食べているのに、重さが全くなく、優しく、どこか暖かさを感じる。
それに加えて、このレストランは、そのロケーションが素晴らしい。
ホテル2階の一番奥にあり、窓も二重にされているため、東京駅のホームのすぐ横にありながら、雑踏とは全くかけ離れた静かな時間が流れている。
床には絨毯が敷かれ、天井には上品なシャンデリアがあり、本当に品が良く、ゆったりとしている。
しかし、窓際の席から外を見れば、絶える事なく、忙しなそうに、電車で移動する人々が見える。
つまり、同じ「時間」の流れの中にいながら、壁を一枚隔てるだけで、全く違う過ごし方をしているのが見えるのだ。
日常の自分は、あんなに、忙しそうなのか…。
そんなことを強烈に感じさせてくれるこの場所が私は好きなのだ。
ホテルはよく、「非日常を感じる場所」だと言われる。
ラグジュアリーで煌びやか。
美しく、豪華な場所で過ごす時間は「日常を忘れさせてくれる」と言われる。
たしかに、美味しいワインを飲み、美味しい食事を食べ、大切な人と、思い出に残る時間を過ごす。
それは、私にとっての「日常」ではない。
そういう意味では、このホテルの、このレストランで過ごす時間は「非日常」である。
しかし、窓の外をみると、日常を「忘れる」わけではない。
忙しなく動く人と電車を見ながら、日常を「振り返る」ことができる。
あぁ、昨日は少し、急ぎ過ぎたかもしれない。焦りすぎたのが悪かったのかもしれない。
時間に流されてしまったのかも…。
そんな風にいつもの自分を振り返り、ちょっぴり反省する。
そして、また明日から、穏やかに、私らしく頑張ろう。
そんなスイッチを静かに入れてくれる。
このレストランはそういう場所なのだ。
自分の中の空気を入れ替えてくれるような気がする。
だから居心地が良く暖かい。
そして、そんな”暖かさ”が東京ステーションホテルのブランドマークにも現れているように思う。
このホテルのブランドマークは、駅舎を模った濃藍色のマークである。
駅舎自体はは煉瓦、つまり赤っぽい色なのに、なぜ濃藍色なのか。
公式サイトを見ると、
窓に明かりが灯る頃、東京駅舎は「濃藍色(こいあいいろ)」に染まります。
(中略)
東京駅を行き交う無数の乗客のための駅舎が 150 室の宿泊客やホテルをご利用いただくお
客様のための東京ステーションホテルへと表情を変える。
その「時」が色に込められています。参照元:東京ステーションホテル公式サイト
と記されている。
つまり、駅を利用する人々と、ホテルを利用する人々が交錯するその瞬間の駅舎の色を、ブランドマークにしたということだ。
なんとも粋な気がする。
駅舎を利用する人々へ駅舎としての役割を十分に果たしながら、ホテルとして利用する人々への準備を始める。
時間の流れを忙しないものから、ゆったりとしたものへ変えていく。
そんな、暖かい心遣いが垣間見えるように感じる。
だから、きっと、どの瞬間も心地よいのだと思う。
日常を忙しく、一生懸命に過ごすことは、もちろん大切で、ずっとのんびりはしていられない。
仕事や学校へ行けば、嫌でも急がなければならないことはたくさんあるだろう。
しかし、だからこそ、たまには自分を休ませ、振りかえる事も必要だと思う。
このホテルは、まさに大都会の中心で、それを許してくれる隠れ家のような場所なのだ。
仕事や勉強で疲れたとき、ぜひ訪れてみて欲しい。時の流れを感じてみて欲しいと思う。きっと新しい1日が楽しみになるだろう。
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